アガシとニック・ボロテリー


以前、私がお世話になった年配のロシア人の先生がちらりと話してくれたのですが、ロシアから移住してきてアメリカに長いこと住んでいる彼女は、大昔にマリア・シャラポアが10歳そこそこでロシアからニック・ボロテリー・テニスアカデミー(今のIMGアカデミー)に留学してきたとき、色々と面倒を見たそうです。



先生はテニスとは何の関係もない仕事をしているものの、同じロシア人として放っておけなかったのでしょう。フロリダに住むロシア人たちは団結力が強い、とロシア人の友達を見ながら思います。彼女はマリアだけでなく、そんなふうに留学してきて頑張ってるロシア人のティーンたちも、なにかと助けていたよう。

マリアのように両親があとから移住してくることもあるものの、マリア・シャラポアは恩返しとして、プロ選手になった際に、彼女をウィンブルドンに招待して自分の晴れ姿を見せたそうですよ。ステキですね。

先生をよく知る共通の友達とバッタリ会って、そんな話題になったのです。読書家の彼女はマリア・シャラポア自伝を読んでいて、まあよかったよ、と薦めてくれました。


 
ナブラチロワは、わたしの父にこう言った。「お嬢さんには才能がある。アメリカへやりなさい」。
父は6歳だったわたしとともにロシア脱出を決意。全財産に借金を加えた700ドルを握りしめ、テニスの聖地・フロリダ目指し、旧式ジェットに飛び乗った。しかし、言葉も話せない貧しい外国人父娘は、セレブ子女が集う現地テニススクールで冷たくあしらわれる。勝負に友だちはいらない。とにかく上手くなりたい。どんな相手にも勝ちたい。お腹を空かせてボロボロのウェアで死ぬ気で練習に励んだ末、遂に有力エージェントから目をかけられる。(アマゾン)

それからIMGの話題になり、私がたまに赴くことがあると話すと、最近読んだアンドレ・アガシの本がとても面白かったと教えてくれました。

アガシもまた、10代になってすぐに家族と別れてニック・ボロテリー・テニスアカデミーに入学し、テニスに打ち込むべく寮生活を送っています。ただ、その自伝本によると、アカデミーやニックのことは結構ボロくそに書かれていた、というので驚きました。

そもそもアガシはテニスなど好きでも何でもなく、テニス狂の父親から無理やり特訓を強いられてアカデミーに送りこまれていたのですね。

この本の書評



イランからの米国移民である元ボクサーの父の強制で、幼くしてラケットを握らされ、少年期に収容所のごときアカデミーでテニス漬けとなる。(引用元)

ニック・ボロテリー・テニスアカデミーが収容所のごとき、と書かれてしまっているんですね。残念ながら、日本語版はアマゾンでは中古しか取り扱っていない様子。




英語版のキンドルやオーディブル版は日本からでもダウンロード可能



アメリカ版アマゾンについた書評にも『厳しい父親やテニスアカデミーの場面はまさに収容所のような感じが伝わってきた』というコメントが見られたので気になります。

10代になったばかりの頃に、好きでもないテニスを特訓するために全寮制のアカデミーに入れられてしまった彼。シャラポアにしてもそうですが、今のIMGの華やかな雰囲気からは想像もつかないような苦労があったと思われます。

NYタイムズベストセラーの1位になったばかりか、英国スポーツブックアワードも受賞。2018年にはエスクァイアが選ぶ「スポーツ関連本の優秀トップ30位」に入選した良書のようですよ。ぜひ読んでみたくなりました。

ティモシー・フェリスも絶賛する本のようです。ティモシー”ティム”フェリスとはアメリカの作家、起業家、講演家で、10年前に出版されたこの本はアメリカでは大ベストセラーです。




さてさて、NYベストセラー本になり、賞まで受賞してしまったアガシの本で、「収容所みたい」という印象を読者に与えてしまったニック・ボロテリー・テニスアカデミー。暴露本のように書かれていたのかどうか、本を読んでいない私にはよく分かりませんが、ニックにとっては打撃ではなかったのでしょうか。今でもIMGアカデミーのテニスコートで見かける彼。これについて、どう思っているのか気になります。

と思いながらサーチしたら、なんと去年、ニック・ボロテリーにスポットライトをあてたドキュメンタリー番組が放映されていましたよ。



この予告を見ると、当時のアカデミーについて収容所のようだという言葉が出てくるものの、決して悪いようには描かれていないのではないかと思いました。

たった2分間の予告映像ですが、編集の仕方がうまくてテニス界のことを知らない私ですらぐっとひきこまれてしまいそう。日本から観ることができないようで残念ですが、アメリカだとアマゾンから有料で見ることができるようです。

ニックはアガシを息子のように愛して贔屓していたけれど、彼のコーチを辞めるという選択をした。それはアガシにとって精神的な打撃でもあったし、大きな間違いでもあった。

『僕にとってあなたは、1人しかいない父親のようだ』という、たぶん昔に貰ったのであろう、アガシからの手紙を読み上げて涙をぬぐう86歳のニック。「でも、あのときは、そうしなければならなかったんだ」

このドキュメンタリー番組を紹介する関連記事を読むと、ニックは当時、生徒たちをかなり贔屓していたし、見込みのない生徒たちは寮に残し、有望な生徒たちだけ自分の豪邸に住まわせていい食事を与えていたそう。


有望であるうちは、まるで自分の子供でもあるかのように大切に愛してくれるけれど、思うように効果を出せないと、そのうちに家も学校も追い出される。そう答えている元選手も出てきます。

ニックは、そういうことを今はもう覚えていません。なぜなら、過去を振り返ることをしないから。いつも前しか見ていないから。

だから7回も結婚できるのかも!

番組作品の中で彼はこんなふうに言っているようです。
「もしも私が傷つけたのであれば、すまなかった、と思う。そんな事実があったのなら。」

当時のアガシとニックの関係についてクローズアップされているようですが、ニックが過去を振り返らず、後悔もしていなくて、今だけしか見ていないのなら、周囲がわざわざ過去を眺めてあれこれ言うこともないという気はします。ただ、でも、アガシの本に感銘を受けた人にとっては興味深い映像なのだろうし、IMGの過去をもっと知りたい人にとっても色々と参考になるのかもしれませんね。



おまけ:

IMGの敷地内に出没するアライグマ。



ひょっこりはん

そんな、じっと見つめなくても。。


家族みんなでゴミあさり。
一匹ゴミ箱に落ちていたけど
大丈夫なんでしょうか。

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